むかしのこと。

雨の日のコンクリートのにおい。

学校までの一本道と誰もいない教室。

わすれものをしてイエまで取りに帰る。

こんなありふれたことが鮮明に思い出せる。

あのころはまいにちがものがたりだった。

いま,ぼくは昨日のことについて語れない。

なにかちがってしまっているだろうか?

ありふれたことはいまにもたくさんあって,

時間は平等に流れて,過ぎる。

それでも,その一瞬を掬い取れないなら,

ぼくたちはいまどこにいるのだろう。

違う世界にでも迷い込んでしまったの?